【連載】「眼鏡の社会史」(白山晰也著)第十九回
弊社四代目社長の白山晰也が記した著書「眼鏡の社会史」(ダイヤモンド社)の無料公開連載の第十九回です。
老舗眼鏡店の代表であった白山晰也が眼鏡の歴史について語ります。
今回は「豊国祭礼図」屏風と眼鏡についてです。前回はこちら
眼鏡をかけた日本人
南蛮屏風とならんで、近世初期風俗画の重要なジャンルに、祭礼風俗画がある。
「祇園祭礼図」や「日吉山王祭礼図」、その他数多くある祭礼図の中でも、ひときわ異彩を放っているのが、この「豊国祭礼図」屏風である。
さきの南蛮屏風に描かれた眼鏡をかけた人物が、いずれもポルトガル人であったのに対して、「豊国祭礼図」屏風におけるそれは、日本人であり、眼鏡をかけた日本人を描いた画として、おそらく最初の作品ではないかと考えられるからである。
ところで、「豊国祭礼図」屏風は、豊臣秀吉の七回忌にあたる慶長九年(一六〇四年)八月十二日から十八日にかけて行われた臨時祭礼の有様を描いた作品である。
この屏風は、写本も含めて数点知られているが、ここで取り上げるのは〔図6-4〕の、眼鏡をかけた人物が描かれている徳川黎明会本である。
鼻眼鏡をかけた人物は、この黎明会本の左隻第一扇に描かれているもので、下京丑寅組の「一つ物」、つまり仮装した練り物行列の中に登場する。
「豊国祭礼図」屏風(徳川黎明会本)にみえる眼鏡は、祭礼という非日常的な場における、しかも、仮装行列の中での異装として使われていた。
つまり、南蛮屏風に描かれたポルトガル人のように、日常的な生活の中で使われていたのとはかなり異なるケースである。
慶長九年当時の日本人が、日常的な生活の中で眼鏡を使用するということはまだまだ、少なかったのであろうか。(続く)
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